2022年3月3日、沖縄県の那覇市立図書館で電子図書館「なはし電子図書館」がオープンしたとのことです。
那覇市は沖縄県内で最大の人口(約32万人)を誇り、通勤・通学者を合わせた昼間人口(約35万人)も最大です。この数字から、沖縄県民(約140万人)の4人に1人が那覇市立図書館を利用できることになります。
今回の「なはし電子図書館」の開館は、多くの沖縄県民の方にとって朗報といえるでしょう。
最近いろんなところで電子図書館がオープンしたって聞くなぁ
いいところに気づいたね。どんどん増えてきているんだよ
2022年だけでも京都府福知山市の「ふくちやま電子図書館」、愛知県蒲郡市の「がまごおり電子図書館」、鹿児島県鹿児島市の「鹿児島市電子図書館」、沖縄県浦添市の「浦添市電子図書館」、長崎県西海市の「さいかい電子図書館」など各地で電子図書館がオープンしています。
電子図書館の増加には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が要因となっていると見られています。
国立国会図書館の調査によると、新型コロナの感染拡大によって、ほとんどの公立図書館(97.3%)が「少なくとも一度は閉館措置を行ったことがある。」と回答したそうです。
■国立国会図書館2022年3月2日付プレスリリース:
公立図書館における新型コロナウイルス感染症への対応について全国規模の調査を実施しました(付・プレスリリース)
施設が休館を余儀なくされても、電子図書館であれば原則24時間365日利用できます。アクセスするための端末さえあれば、場所も関係ありません。
新しい生活様式が求められる今日にマッチした図書館サービスといえるでしょう。
では、電子図書館は実際に全国でどのくらい増えているのでしょうか。それについては、一般社団法人電子出版政策・流通協議会(電流協)が四半期ごとに調査を行い、データを公表しています。
この記事作成時点(2022.3)で最新の2022年1月1日現在のデータをコロナ前の2020年1月1日現在のデータと比較してみましょう。
2020.1.1現在 | 2022.1.1現在 | 増加数 | |
実施自治体 | 91自治体 | 272自治体 | (+181) |
電子図書館 | 88館 | 265館 | (+177) |
実施自治体数・電子図書館数いずれもコロナ前の約3倍に増えているのがわかります。
全国の自治体数(市町村1724※+特別区23+都道府県47)は1794ですので、約15%の自治体が電子図書館を導入していることになります。
これは2022年1月1日現在のデータですので、上で紹介した「なはし電子図書館」などは含まれていません。今後は、さらに割合が高まっていくことが予想されます。
※北方領土の6村を含む。
電子図書館は、場所や時間を問わず、いつでもどこでも本を借りられ、かつ、読めるというメリットがあります。
今やスマートフォンは8割以上の世帯で保有されているというデータもあり(総務省『令和3年版情報通信白書』)、電子図書館は利用者が一気に増えるポテンシャルを秘めているでしょう。
また、貸出手続は利用者自身で行い返却も自動的に行われるため、その部分にかかる人件費がいらないということとや、本を置くスペースが不要であるということなど、図書館側のメリットもあります。
しかしながら、電子図書館の課題として、一般的にまだまだ少ない蔵書数をどう増やしていくかということが言えると思います。
僕も居住する自治体の電子図書館の蔵書をチェックしてみたのですが、種類が限られていて正直読みたいと思える本がありませんでした。
電子本サービスの事業者とのライセンス契約に多額の費用がかかり、利用者のニーズに合った本を多数揃えることが難しいのかもしれません。
実際に、秋田県立図書館は、全国でもいち早く(コロナよりも前に)電子図書館を開始したものの、現在は予算上の問題もあって休止しているとのことです。
秋田県立図書館では12年10月にサービスを始めたが、18年12月から休止中だ。システムの維持と電子書籍の購入に毎年数百万円かかり、数年ごとのシステム更新でさらにコストが膨らむ。利用頻度やコンテンツの少なさなどから、総合的に判断したという。
出典:2022年3月5日付 朝日新聞デジタル(https://www.asahi.com/articles/ASQ2Q6JJ3PD9ULEI003.html)
今後、電子図書館がよりよいサービスとして定着していくためには、自治体が予算をしっかりと投入してコンテンツを充実させていくことが鍵となるでしょう。
コンテンツが充実すれば利用者も増え、利用書のニーズを満たすためさらにコンテンツを充実させるという好循環が生まれると考えます。
ただ、電子図書館を充実させる一方で、紙の本を購入する予算が全然ないということにならないよう、自治体にはうまくバランスを取って図書館運営をしていってほしいところですね。
便利なサービスなのは間違いないので、いつまでもあってほしいよね
僕らも電子図書館を積極的に利用していこう!