児童文学のうち、幼稚園年長から小学校低学年まで、低学年から中学年まで、中学年から高学年まで、高学年以上向きの本をそれぞれ1冊ずつ紹介します。
1 幼稚園児~小学校低学年向き
『子うさぎましろのお話』文・佐々木たづ 絵・三好碩也せきや(ポプラ社)1970
この絵本は、子うさぎのましろがサンタクロースからクリスマスプレゼントをもう1つもらおうとして、体に墨を塗り別のうさぎになりすまし、嘘をついてしまうお話です。
ましろはその後反省し、神様に返すためにまいた種から伸びたモミの木とともに成長します。
この本を通して、子どもたちは嘘をつくことで生じる罪悪感、嘘を反省し自分を取り戻す大切さ、そして、誠実に生きることの清々しさを学ぶことができます。
また、サンタクロースの視点に着目させ、嘘をついた相手を許す寛容の精神の重要さを伝えることも可能です。
この本はストーリー展開もすばらしいです。
サンタクロースは墨を塗ったましろに気付くのか、2つめのプレゼントは何をもらえるのか、まいた種はどうなるのかなど先の読めない展開が続き、ワクワク楽しめる一冊です。
2 低学年~中学年向き
『火のくつと風のサンダル』ウェルファル作 童話館出版 1997
この本は、貧乏な靴修理屋の息子チムが、誕生日のお祝いとして父親と二人で徒歩の旅に出るお話です。
友人にチビ、デブとからかわれ自分に自信が持てなかったチムが、ユーモアに富む父親との道中での語らいや人々との触れ合いを通して成長していきます。
そのようなチムの姿に共感を覚え、自分もがんばろうと元気が沸いてくる作品です。
また、一緒に旅をする父親はもちろん、家を守る母親による愛情表現も随所に散りばめられ、これを読む子どもがお父さん、お母さん、家族の大切さについて改めて考えるきっかけとなり得る本です。
どこかへ旅をしたいという気持ちも生まれるので、ぜひ夏休みの一冊としておすすめしたい本です。
3 中学年~高学年向き
『キロコちゃんとみどりのくつ』たかどのほうこ著 あかね書房 1996
この本は、小学2年生の女の子キロコちゃんが目とベロの付いたみどり色の靴に出会うところから始まり、勝手に動き出すその靴に翻弄され、愉快な騒動を引き起こしていくお話です。
わがままだったキロコちゃんが、自分以上にわがままではちゃめちゃな靴に振り回されながら、少しずつ思いやりの心や周囲の人との接し方を身に付けていきます。
読者はコミカルな場面を満喫しながらキロコちゃんに自分を重ね、心温かな人間へと一歩ずつ成長することができます。
また、キロコちゃんがすてきなスキップを楽しんでいるように、自分ならこの靴と一緒に何をしてみたいか、想像力を刺激し育んでくれる本です。
4 高学年以上向き
『小学五年生』重松清著 文春文庫 2009
この本は、小学五年生の少年を主人公とした17編の短編集です。
転校、初恋、家族の入院、死、性への目覚めなど、少年たちがそれぞれ直面している現実を受け止め、自分で考え成長していく物語が集まっています。
思春期一歩手前の多感な時期である少年たちの心情がリアルに描かれており、読者となる同年代の子どもたちに、共感や切なさ、爽快感、ポジティブな感情など様々な思いを抱かせてくれる秀逸な一冊です。
また、行間から作者の温かな眼差しが感じられ、各話の読後にじんわりと心地よい余韻を味わわせてくれます。
一遍一遍が簡潔で読みやすく、普段本を読まない子どもでも親しみやすいという点でもぜひ紹介したい作品です。親子で読んで、それぞれ感想を語り合い、心を通わせることもおすすめしたいです。
学年別おすすめ本を探すに当たってはベーシック司書講座を参考にしました。
こちらの本も参照したかな↓
これらの参考書で紹介されている本を実際にいくつかピックアップして読んでみました。
児童文学とはいえ、中学年以上になると結構ボリュームもあり、思った以上に読むのに時間がかかりました。
でも、それだけ読後の満足度が高かったです!
児童文学、名作は大人が読んでも面白いね!
『子うさぎましろのお話』はウサギ界のバイブル!